HYBEが2021年11月に発行した転換社債(CB)に対する早期償還請求(プットオプション)がほぼ100%に達しました。
以前の記事で伝えた時よりもさらに投資家からの請求が集中していることから、HYBEの将来性についてほとんどの投資家が不安視していることが窺えます。
また、そんな中でも未来アセット証券だけが、利益が出ないにも関わらずHYBEの資金繰りの負担を一手に引き受けることについて、どうしてそこまで?という疑問の声も出ている状況です。
HYBE、4000億ウォンの借金をした理由は…
プットオプションとは、一定期間が過ぎると社債(借金)の元金を早期に償還できる権利のことです。
2024年10月7日、金融投資業界によるとHYBEのCBのプットオプション行使比率は、4日時点で99.95%に達しました。
HYBEは元金4000億ウォンのうち約3998億ウォンを、2024年11月5日までに投資家に返済する必要があります。
現在、HYBEの財務状況を見てみると、2024年6月末時点での現金および現金性資産(流動金融資産を含む)は約3122億ウォンです。
返済額である4000億ウォンは、現金性資産を大幅に上回っています。
HYBEが4000億ウォンのCBを発行した背景には、Dunamu(韓国の大手仮想通貨取引所)の株式を約5000億ウォンで取得するための資金調達がありました。
Dunamuは韓国最大級の仮想通貨取引所「Upbit」を運営する企業であり、仮想通貨やブロックチェーン技術の分野で強みを持っています。
当初、HYBEとDunamuは、ブロックチェーン技術やNFT(非代替性トークン)の活用を通じて新たな事業展開を目指していました。
音楽やアートのデジタル資産化を促進し、ファン向けのデジタルコンテンツ販売や、新しい形のファンエンゲージメントを実現することを念頭においたパートナーシップでしたが、NFT自体がオワコン化する中で時代遅れな戦略がうまくいくはずもありません。
現在、HYBEはこのDunamuの株式を売却することで資金を確保する案を検討していますが、すぐには実行できません。
DunamuとHYBEは、2024年11月23日まで互いに株式を売却できない制約があるためです。
さらに、HYBEが株式を取得してからDunamuの経営状況はかなり悪化しているため、株式を売却すればHYBEは大規模な損失を確定することになります。
一方でDunamuもHYBE株を5.53%所有しています。
未来アセット証券の役割とリスク
こうした状況を受け、HYBEはCB4000億ウォンを借り換えることで対応を試みており、その際の発行主管を未来アセット証券が引き受けることになりました。
未来アセット証券は、機関投資家から売れ残った社債をすべて買い取る決断をしています。しかし、この新しい社債も2021年と同様、表面利率は0%。すべて買い取っても1円の利益も得られません。
未来アセット証券にとってこの決断はリスクが大きく、韓国の金融関係者からも懸念の声が出ています。
3年前にHYBEが発行したCBの際も同社が大部分を買収しましたが、株価上昇による利益が得られず、さらに0%の利率のため金利収入もありませんでした。
当時、未来アセット証券は約3900億ウォン分のCBを引き受け、そのうち1500億ウォンを自社資金で購入したのです。
そして今回HYBEは、当時にした4000億円の社債(借金)の返還請求に応じられないために、借り換えをしなくてはならず、全てを未来アセット証券が引き受けるということです。
HYBE株価の動向と未来アセット証券の期待
未来アセット証券としては、BTSメンバー全員の兵役終了後の株価上昇を期待していますが、現状ではHYBEの株価は17万ウォン台を抜け出せていません。
さらに、BTSメンバーの飲酒運転や、ミン・ヒジン氏の再任に関する仮処分申請など、マイナス要因も影響を与えています。
今回のCB発行には株価が一定水準を下回った場合の転換価額調整の条件も含まれておらず、将来の株価上昇に期待する未来アセット証券に対するリスクが高まっています。
HYBEの転換社債(CB)の早期償還請求に対して、未来アセット証券がその負担を引き受ける背景には、複雑な事情があるようです。
未来アセット証券は、現在、低い利益率や高まる負債比率の影響を受けており、財務状況を安定させるためには成長の可能性が高いパートナーを必要としています。
HYBEは、BTSやその他のアーティストによるグローバルな人気を背景に、エンターテインメント業界での成長が期待されています。
特に、HYBEの多角化戦略や、海外市場での収益拡大が将来的に高いリターンを生む可能性があることから、未来アセット証券はリスクを負ってでも関係を強化しておきたいと考える理由があるでしょう。
また、未来アセット証券にとって、HYBEのような有力企業との協力関係を維持することは、自社のブランド価値を高める効果も期待できます。
これが他の投資家やパートナーに対して信頼性を示し、今後のビジネス展開を有利に進める上で有益なのです。
HYBEを支援して短期的な財務リスクを取る一方で、長期的な成長の可能性を見込む未来アセット証券の戦略的判断が、今回の借り換え4000億ウォン負担の背景にあると考えられます。